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4. 波高変化と砕波
4−1. 波高変化
図-6は、沖波に対する有義波高の比H1/3/H0'の相対水深h/Ho'による変化を示したものである。海底勾配が急になると浅水変形による波高増大は小さくなり、海底勾配1/3になると波高の顕著な増加が見られない。なお、海底勾配が1/10および1/5のときには、沖波の波形勾配H0'/L0が小さいほど波高増大が顕著である。
図-7は、沖波に対する最高波高の比Hmax/H0’の相対水深h/H0’による変化を示したものである。有義波高と同様、1/10〜1/3の範囲では海底勾配が急なほど波高増大は小さくなる。
なお、図-6および図-7の実線は合田のモデル1)によって海底勾配が1/10のときの波高変化を計算した結果である。勾配が1/10より急な場合に1/10のときの波高を用いれば安全側の値を推定できることがわかる。
4−2. 砕波形式
Galvin5)によれば、海底地形が1/50〜1/10の一様勾配であるとき、砕波形式は海底勾配tanθと沖波の波形勾配H0'/L0によって以下のように分類される。

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図-8は式(2)による砕波形式と今回の実験条件を●印で示したものである。
今回の実験では、規則波の砕波の様子をビデオカメラにより撮影し、砕波形式を調べた。その結果、海底勾配が1/10、波形勾配が0.06のときの砕波形式が、巻き波と崩れ波の中間であることを確認した。また、海底勾配が1/3、波形勾配が0.02のときは、巻き波と判断されるものの、砕け寄せ波に近い形式であることも確認した。その他のものは典型的な巻き波であった。以上のことから、式(2)は1/10よりも急な海岸にも概ね適用できることがわかった。

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Fig.8 Type of Wave Breaker

4−3海底斜面の反射率
斜面の反射率は海底勾配が急になるほど大きくなることが知られている。今回の不規則波の実験では、海底勾配が1/10のときの反射率が約0.1であったのに対し、海底勾配が1/3のときの反射率は0.3〜0.5であった。
また、海底勾配が1/10のときには沖波の波形勾配による差はほとんどなかったが、海底勾配が1/3のときは沖波の波形勾配H0'/L0が大きいほど反射率が大きくなる傾向が見られ、沖波の波形勾配が0.02, 0.04, 0.06のときの反射率は、それぞれ0.21, 0.28, 0.47であった。
5. 平均水位の変化
5−1. 平均水位の変化
波が浅水変形や砕波変形することによって、砕波帯付近の平均水位は低下し、汀線に近傍の平均水位は逆に上昇する。このような平均水位の低下をsetdowm、汀線近傍で起きる平均水位の上昇をSetupという。図-9は、不規則波について平均水位の場所的変化を示したものである。海底勾配が1/5または1/3のとき、平均水位は相対水深h/H0'が2付近の地点から低下し始め、相対水深か1より小さいところで最低となっている。setdown量は海底勾配が急なほど大きい。相対水深がさらに小さくなると平均水位は上昇し、汀線で最高となる。setup量も海底勾配が急なほど大きく、海底勾配が1/10、1/5、1/3のときに、それぞれ沖波波高の約0.2倍、約0.25倍、約0.35倍に達する。なお、それぞれの海底勾配において、沖波の波形勾配が小さいほどSetup量やsetdowm量は大きい。
5−2. サーフビート
合田1)は、茨城県大洗海岸、新潟港松浜海岸、宮崎県宮崎海岸において観測されたデータを解析し、サーフビートの強さが次式で表されると報告した。

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である。
図-10は今回の模型実験の結果を示したものである。サーフビートの強さは沖波の波形勾配H0'/L0や相対水深h/H0'によって表され、海底勾配による違いはほとんどない。また、砕波前と砕波後との違いもほとんどない。ただし、今回の模型実験によって得られた係数αの値は0.08程度であり、合田1)による値の約2倍である。現地では長周期の水位変動が汀線に平行な方向にも分散し得ること、水路の水は水路の持つ固有周期で振動すること、などがその原因として考えられる。

 

 

 

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